木材には、大きく分けて自然材の無垢材と自然の木材をスライスして人工的に積層して作られた集成材とがあります。それぞれ長所・短所を把握した上で、材料・樹種を選定してください。
種別 | 長所 | 短所 |
無垢材 | ・自然素材でシックハウスの心配がない。 | ・強度にバラツキがある。 同じ樹種でも強度にバラツキがある。 ・乾燥収縮率が高く、外壁の暴れが目立ちやすい。 |
集成材 | ・強度が安定している。 ・反りや曲がりが少ない。 ・寸法の精度が高い。 ・無垢材より強度がある。 ・自由な形状、寸法の部材が可能。 ・銘木に匹敵する美しさを安価に得ることができる。 ・構造計算対応の場合、壁量計算対応が不要。 (構造計算の手法参照) | ・シックハウスが気になる。 |
建物の各構造部材には様々な力が作用し、それに応じて強度もいろいろな種類があります。構造部材として一般的に重要なものは、引張り強度・圧縮強度・曲げ強度・せん断強度の4種類です。
柱材は上階の荷重により材軸方向に強い圧縮力をうけるため、圧縮強度の高い部材を、また 梁材は、材軸の垂直方向から荷重を受けるために、曲げ強度の高い材料を選定することが望ましいです。
梁に必要な寸法はこちらを参照して下さい。
木材(無垢材)は、その樹種によって強さが異なり、また 同じ樹種でも育った環境や成熟度、製材の部位、乾燥度合いによっても強度の違いがあります。まったく同じ強度の木材はありません。
その弱点を補うために集成材が作られるようになりました。
無垢材の強度は自然材によりバラツキがありますが、平成12年国土交通省告示第1452号で材種や等級によって基準強度が指定されています。
樹種だけにこだわらず、強度についても理解しておきましょう。
◆強度は、目視等級材・機械等級材・無等級材に分類され、JAS認定材は、目視等級材 若しくは機械等級材で、同じ樹種でも強度ごとに区分されています。 また JAS認定外の木材は無等級扱いとなります。
目視等級材では1級・2級・3級の3段階の強度区分があり、等級の小さい方が強度が強く、機械等級材では曲げヤング係数により区分され、等級の数値が大きい程強度が強い材料となります。
無垢材の強度はこちらを参照して下さい。
1,目視等級材とは
構造製材のうち、節・丸身など材の欠点を目視により測定し、等級区分された木材。
(JAS規格製材)
2,機械等級材とは
構造製材のうち、機械によりヤング係数を測定し、等級区分された木材。
(JAS規格製材)
3,無等級材とは
JAS規格製材以外の木材で樹種によって基準強度が定められています。
一番多く流通している製材です。
◆二等・一等・特一等や小節・上小節・無節といった等級があります。これは見た目の良さを表した等級で、強度を表したものではありません。
二等・一等・特一等は節が目立ったり丸みがあったりするため、普通は隠れる部分に用いる並材です。並材には、おおまかに言えば小節(親指の先で隠れる程度の節)より大きな節があり、その節の大きさや数、材の丸みの有無に応じて二等・一等・特一等に区分されています。ただし、並材の等級区分は、公的なものではありません。特一等とは最上位の等級であるかのような印象を受けますが、並材のなかで最上位という意味です。
特一等材には丸身はありませんが、一つ下の一等材には構造的に支障が無い程度の丸みがあります。一等材でも構造的な支障はありませんが、隠れる部分でも普通は特一等材が用いられます。
小節・上小節・無節はJASの造作用製材の材面の品質基準として定められた等級です。
1,小節とは
広い材面を含む1材面以上の材面において、節の長径が20mm(生き節以外の節にあっては10mm)以下で、材長2m未満にあっては5個(木口の長辺が210mm以上のものは8個)以内であること。
2,上小節とは
広い材面を含む1材面以上の材面において、節の長径が10mm(生き節以外の節にあっては5mm)以下で、材長2m未満にあっては4個(木口の長辺が210mm以上のものは6個)以内であること。
3,無節とは
広い材面を含む1材面以上の材面に節がないこと。
◆木材は多くの水分を含んでいます。含水率が低いほど木材の強度は強く、木材の暴れも少なくなります。
含水率は、木材に含まれる水分の量を表す指標です。
木材の含水率(%)= | 木材の重量−全乾燥重量 全乾燥重量 | ×100 |
木材の含水率はこちらを参照して下さい。
構造材(無垢材)の選定 ワンポイントアドバイス |
1,無垢材を採用する場合は、JAS規格製材を使用する。(機械等級製材が安心できる) 2,目視等級製材を採用する場合は、梁は甲種構造材・柱は乙種構造材1級を採用する。 3,価格を考慮して、等級の高い樹種を採用する。 4,構造計算は、無等級材の基準強度を採用し安全率を確保する。 5,梁材はべいまつ、柱材はひのきが一般的に多用されています。 6,隠れる構造材でも、特一等を採用する。 7,乾燥材(SD20以下)を採用する。 8,土台、通柱、隅柱、外周廻りの梁は120mm(4寸)を採用する。 9,耐久性も考慮して樹種を選定する。 |
集成材とは一定の製造基準に基づいて、人工乾燥でよく乾燥し大きな節や割れなど木の欠点を取り除き木目にそって、長さ・幅・厚さの方向に接着剤を使って集成接着した建築材料のことです。
集成材には、構造用集成材・造作用集成材・化粧ばり構造用集成材があります。
1,構造用集成材とは
構造耐力を目的とした部材で、ひき板をその繊維方向を互いにほぼ平行にして積層接着したもので、所要の耐力に応じた断面の大きさと安定した性能を持ち、大スパンの建物の建設が可能です。また、わん曲材とすることも出来ます。寸法、断面積によって大断面、中断面、小断面に分類されています。木構造の耐力部材として柱、桁、梁、わん曲アーチなどに使用されます。
2,化粧ばり構造用集成材とは
構造用集成材の表面に、薄い化粧板を表面に貼りつけたもの。真壁の和室の柱に使用されます。
3,造作用集成材とは
建築内部の造作用部材として使われるもので、ひき板もしくは小角材等を素地のままで積層接着し、薄い化粧板を表面に貼りつけたもの。表面の化粧板の種類により豊富な表面効果を得ることができます。木構造の耐力部材として使用することは出来ません。
◆構造用集成材には、ひき板の構成により異等級構成(対称構成・非対称構成)と同一等級構成の集成材に区分されます。
※対称異等級材は曲げ荷重を受ける梁材に、同一等級材は圧縮荷重を受ける柱材に使用します。
集成材の強度はこちらを参照して下さい。
◆集成材を使用する環境条件に応じ、使用環境1及び使用環境2に区分されています。
1,使用環境1とは
集成材の含水率が長期間継続的にまたは断続的に19%を超える環境、直接外気にさらされる環境、太陽熱等により長期間断続的に高温になる環境、構造物の火災時でも高度の接着性能を要求される環境その他の構造物の耐久部材として、接着剤の耐水性、耐候性または耐熱性について高度な性能が要求される使用環境をいいます。
2,使用環境2とは
構造物の耐力部材として、接着剤の耐水性、耐候性または耐熱性について通常の性能が要求される使用環境をいいます。
構造材(集成材)の選定 ワンポイントアドバイス |
1,梁材は異等級対称構成集成材、柱材及び土台は同一等級構成集成材を採用。 2,外部廻り及び水回りは使用環境1の集成材を採用。 3,価格を考慮して、強度の強い集成材を採用する。 ・梁材E120−F330 ・通柱E120−F375 ・管柱E 95−F315 ・土台E 85−F300が一般的に多用されています。 4,構造計算の強度と実際使用する木材強度を合わせる。 5,土台、通柱、隅柱、外周廻りの梁は120mm(4寸)を採用する。 6,耐久性も考慮して樹種を選定する。 |
緻密な構造計算を行い強度の強い木材を採用して、しっかりした建物を建てても、構造材が劣化すれば、耐力の低下を招くことになります。
阪神・淡路大震災の事例を見ても木造建物の劣化による構造耐力が低下し、被害を拡大したことは明白です。木造住宅を建てる上で重要なポイントとして、耐久性の高い樹種を選定する必要があります。
また 防腐・防蟻処理としてJAS規格としてのK1〜K5の薬剤処理材(保存処理木材)を使用し耐久性を向上させる方法もあります。
◆樹種により木材の強度・耐久性は異なり、強度のある樹種が必ずしも耐久性が高いとは言えません。日本の木造住宅に伝統的に使用されてきたヒバ・ヒノキ・スギの芯持ち材が、耐久性が高く、同じ樹種でも辺材よりも心材の方が耐久性が高いと言えます。
1,辺材・芯材とは
木の組織は、根から水を吸い上げて葉を繁らせ上方へ伸びたり幹を太くする、生活機能を有する部分と、水分や養分の移動が停止し生活細胞がなくなって幹を支える、骨格の役割を担う部分に分かれています。 前者を辺材、後者を芯材と言い、辺材は樹皮のすぐ内側に位置して心材を取り巻き、木が生長して太るに従い芯材に接している細胞が死んで芯材に移行していきます。大木になると大部分が芯材になります。
2,辺材の特徴
辺材は「白太(しらた)」と呼ばれ、栄養分を多く含むため耐久性に劣るので構造材としての価値は低くなります。
3,芯材の特徴
芯材は辺材より堅くて、耐久性を増加させる化学成分を多く含み、色は辺材に比べて濃色になるため「赤身」と呼ばれています。
防蟻性・耐久性の樹種区分はこちらを参照して下さい。
◆木材を薬剤処理することにより本来の耐朽性を更に高めようとして誕生したのが保存処理木材です。保存処理木材は、鉄道の枕木にクレオソート処理を施したことから始まり、現在でも電柱・枕木・外構部材・木製遊具・住宅部材などに幅広く用いられています。
薬剤処理材(保存処理木材)はこちらを参照して下さい。
耐久性向上の ワンポイントアドバイス |
1,外壁の軸組みに外壁通気層を設け下記のいずれかの対応を行なう。(※1) 防腐・防蟻処理を行なう。(地盤面から1M以内の部分) 耐久性区分D1の樹種で小径12cm以上の柱を採用する。 2,土台は外壁の下端に水切りを設け、耐久性区分D1の樹種に防腐処理を行なう。(※2) 3,コンクリートスラブと一体となったベタ基礎を採用する。(※3) 4,基礎の立ち上がりを地盤面から400mm以上確保する。 5,床下換気を十分に確保する。(※4) 6,小屋裏換気を十分に確保する。(※5) 7,浴室はユニットバスを採用する。 8,屋根下地にゴムアスファルトルーフィングを採用する。 9,外壁通気胴縁に防腐処理胴縁を採用する。 10,土台、通柱、隅柱は120mm(4寸)角を採用。 11,外周廻りの梁・桁の幅は120mm(4寸)を採用。 |
※1,通気層を設けられない場合は、地盤面より1Mの範囲に保存処理K3相当以上の対応を行なう。
※2,耐久性区分D1を採用すれば防腐処理を行なう必要はないが、耐久性の角度から行なった方がベター。
耐久性区分D1を採用しない場合は、保存処理K3相当の土台(加圧注入土台)を採用する。
※3,布基礎の場合は防湿コンクリート(フイルムシート敷き)を施工する。
※4,基礎パッキン工法を採用し、基礎の構造負担を軽減すること。
※5,小屋裏換気口の必要面積はこちらを参照下さい。
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