JAS規格における保存処理は、個別の規格ではなく製材規格の1基準として位置づけられています。例えば構造用製材に保存処理を施すと、保存処理構造用製材となります。JAS規格では次のように表示され、保存処理については性能区分と薬剤の略号が示されます。
樹 種 名 べいつが |
自然界では樹木が枯れれば何らかの生物により自然に分解されていきますが,建物内部の木材も条件が整えば同様に腐朽・分解が始まります。この分解を助けるのが菌類(主にキノコ類)や木材を食害する昆虫類(白蟻)です。これらの多くは高温多湿な環境を好むため、被害の発生状況が環境条件により異なってきます。そのような環境に応じた保存処理木材の性能を5区分に分け、規格基準が設定されています。
性能区分 | 木材の使用環境 |
K1 | 屋内の乾燥した条件で腐朽・蟻害のおそれのない場所で、乾燥害虫に対して防虫性能のみを必要とするもの。 |
K2 | 低温で腐朽や蟻害のおそれの少ない条件下で高度の耐久性の期待できるもの。 |
K3 | 通常の腐朽・蟻害のおそれのある条件下で高度の耐久性の期待できるもの。 |
K4 | 通常よりはげしい腐朽・蟻害のおそれのある条件下で高度の耐久性の期待できるもの。 |
K5 | 極度に腐朽・蟻害のおそれのある環境下で高度の耐久性の期待できるもの。 |
保存処理薬剤として永い使用実績があるのはクレオソート油とCCA薬剤です。どちらも保存処理木材としての性能は非常に優れており、クレオソート油は今日でも枕木などで使用されています。一方、CCA薬剤で処理された木材は、これに代わる薬剤の開発が進んだことにより生産量はごくわずかになっています。ちなみにホウ素化合物はラワン・ナラ材などの乾燥材を食害するヒラタキクイムシを、その他の薬剤は木材腐朽菌、白蟻を対象としています。 また、JAS規格では浸潤度と吸収量を以下のように定めています。
薬剤の略号 | 使用薬剤 |
A | クレオソート油 |
AAC | アルキルアンモニニウム化合物 |
ACQ | 銅・アルキルアンモニウム化合物 |
B | ホウ素化合物 |
CCA | クロム・銅・ヒ素化合物 |
NCU | ナフテン酸銅 |
NZN | ナフテン酸亜鉛 |
浸潤度
薬剤の木材への注入は通常巨大な圧力釜のような機器を用い、減圧−薬液注入−加圧といったサイクルで処理し、処理後に人工乾燥・養生などを行い製品となるわけです。この注入工程だけでは薬剤を木材の内部まですべてに注入させることは技術的にもコストの上からも容易ではありませんが、腐朽菌や食害虫は表面から進入するので表面付近の浸潤が均等であれば、中央部までの薬剤注入は必要としないのです。そうはいっても表面だけでは不十分ですから、規格では薬剤浸潤度(辺材部では深さに関係なく80%以上、芯材部では表面付近(10〜20mm)の20〜80%)を樹種の耐朽性能や部材の大きさにより設定しています。一例を示すと図のような浸潤を期待しています。
吸収量
7種類の薬剤はすべて同レベルの性能を有しているわけではありませんから、性能区分(K1〜K5)を満たす(浸潤度も同様)吸収量を薬剤の種類毎に規定されています。
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