欠陥住宅・手抜き工事対策 (欠陥住宅防御策)
●欠陥住宅とは?
「住宅において、通常有すべき性能を欠いた住宅」 →瑕疵がある住宅
※瑕疵・・・・目的物が契約に定められた内容を満たしていない。
有すべき性能とは?
性能等基準になるものは?
1, | 建築基準法 | ・・・・ | 国民の生命、健康及び財産の保護を図るための最低の基準。 |
2, | 住宅金融支援機構の仕様書 | ・・・・ | 仕様・性能・納まりなど住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が定めた規定。 |
3, | 品確法 | ・・・・ | 住宅紛争処理の参考となるべき技術基準。 概要は木造住宅の欠陥住宅・瑕疵の技術的基準を参照 |
4, | 性能保証住宅設計施工基準 | ・・・・ | 住宅保証機構が住宅性能保証制度に登録する住宅の設計施工基準。 |
5, | 工事請負契約書等 | ・・・・ | 契約書・契約約款・設計図(実施設計図・見積書)など。 |
6, | その他 | ・・・・ | 宅地造成規制法・日本建築学会の標準工事仕様書など。 |
基本となる基準に、そぐわず 社会通念上、生活に支障をきたす住宅 |
●欠陥住宅はなぜ起きるのか?
欠陥住宅や手抜き工事が起こる要因は大きくわけて、発注形態による問題(コストの圧迫・監理体制の弱体)と技術力不足による問題が考えられます。最近では昔と違い「住宅の品質確保の促進に関する法律」(品確法)が施行され、悪意で発生すると言うことは少なくなりました。
どちらかと言えば造り手側(設計者・施工者・職人さん)の無知や軽率な対応から発生する方が多いのではないかと思います。
また、一般の方には解りにくい構造関係や下地材で、利益確保のための手抜き工事がまだまだ横行し、将来 欠陥住宅につながったり、地震などの震災に耐えられない不安定な建物や耐久性のない建物になったり、安心することはできません。
また、役所や民間の検査機構の検査もあまく、うわべだけの検査で合格しているのが実情です。
1 発注形態による問題(コストの圧迫)
A,コストの圧迫
住宅の新築・建替えを依頼する場合、「ハウスメーカー」、「工務店」、「設計事務所」、土地から探して住まいづくりを行う場合は「不動産販売業者」に依頼することが考えられます。
この中で最も欠陥住宅が発生する可能性が高いのは「不動産販売業者」に依頼した場合です。
「不動産販売業者」とは、主に10数戸規模のミニ宅地開発を中心に商売を行っている業者で、販売力を出すために、ハウスメーカー並の設備機器や内外装仕上げの仕様をうたい文句に、ハウスメーカーより割安感を出すため価格を下げて販売されています。
しかし、元々「不動産販売業者」は自社では建築工事を行わず、自社で工務店の看板を上げていても、建築工事の技術力や知識がなく、工事のコスト管理のノウハウもありません。施工の工夫で正当に建物原価を下げるのではなく、実際に工事を担当する下請け工務店に発注単価を一方的に下げ、自社の利益を確保した上、下請けに値下げ分を負担させているのが実情です。
下請け工務店は自社営業力に乏しく、工事単価を下げられても工事を受けるほかなく。少ない工事代金の中で利益を確保するためには、良心的な業者でも、最低限のレベルで工事を進めることになります。特に建て主から解かりにくい、見えない部分の工事でその傾向が顕著に現われています。
また 住宅メーカーや工務店でも同じ現象が行われています。
普段このような利益の少ない状況で施工している工務店に、建て主から直接新築依頼が舞い込むことがあると、悪徳工務店の場合、下請け時と同じような工事内容で、不当な利益を確保するケースもあります。
B,監理体制の弱体化
建築主は、建物を建てる場合に工事監理者を選定し、選定された工事監理者は設計図通り施工されているか、工事に問題がないかチェック・監理する責任があります。
しかし、設計事務所に依頼する場合は、設計事務所が工事監理を行いますが、住宅メーカーや工務店に設計・施工で依頼する場合は、依頼先の建築会社が建築主に十分な説明を行わず、自社名で工事監理者を届出し、書類上の名義だけの工事監理対応ですまされているのが現状です。
また、工事監理者が設計事務所名になっていても、設計・施工で依頼する以上、設計事務所は下請けで元請けとの力関係があり、正しい本来の監理機能は果たされていません。それよりも、元請より監理費が出ていないので現場にも行きません。設計・施工で依頼する場合は、工事監理者が不在と言っても過言ではありません。
建築会社を監理する人間が不在の状況では、企業の利益追求により手抜き工事や欠陥住宅が発生してもおかしくない状況です。
詳しくは、住宅業界の問題点を参照ください。
2 技術不足による問題
木造住宅は、今まで法律上(構造的)のきめ細かな取り決めがなく、設計内容も簡易な壁量計算を行う程度でプランや意匠を優先させ、構造は大工さんまかせになっていたのが実状です。
しかし 平成7年の阪神淡路大震災の大きな地震災害で木造住宅の倒壊による被害が甚大であったことを踏まえ、平成12年の建築基準法の大改正で、木造建物の構造規定が細かく制定され、従前よりも耐震性に優れた建物が求められるようになり設計手法や施工に求められる内容が複雑になりました。
その改定に伴う設計の対応が理解されず運用され、役所の確認申請の審査や現場の検査も、建物の耐震性能に重要な耐力壁や接合金物などの細かな部分まで、チェックされていないのが現状で、役所(国が認定した民間検査機関)が検査するから安心とは言えません。
●欠陥の症状・原因と対策
地盤沈下、床の傾き・たわみ、壁などの亀裂、雨漏り、耐震性能不足、建物の揺れ・振動、シックハウス、構造関係の施工ミス、音の問題などが、欠陥住宅として発生する主な症状です。
欠陥住宅や手抜き工事があると、建物が完成してから手直しを行ったり、建築会社と紛争になったりと大変な労力と神経を使います。
建築会社まかせにせず、建築主自身が対応策を行うことで、建築会社が認識し、しいては欠陥住宅を防ぐことにつながります。
下記に欠陥住宅の症状・原因・対策を記載しています。工事が着手されるまでに、予防策として建築会社に書面にて施工面での不確定事項や手抜き工事が起こりやすい箇所などを、建築会社がどの様に施工するのか事前に確認すること、工事中には現場に足を運びデジタルカメラにて施工状況の記録を残すことなどの自己防衛、若しくは、当事務所のような第三者の専門家に第三者監理を依頼して欠陥住宅や手抜き工事の防御策を講じることをお勧めいたします。
事前確認事項(契約前)
事前確認事項(施工前)参考例はこちらへ。
1,地盤沈下
1),地盤の強さ
地盤に必要な強さは、上からかかる建物の荷重に耐えられるだけの強さが必要です。どれだけの強さがあるかを調べるために、地盤調査を必ず行うことが重要です。
一般的に川や池・沼などのそばや地名に新・開・沼・水・沢などがつく所は地盤が弱く、山手に行くほど地盤がしっかりしています。
また、廻りに大きな樹木がある場合は地盤が強く、背の低い木しか育っていない所は地盤が弱いとされています。
尚、宅地開発された造成地の盛土部分は、新たに土を盛り地盤面を造っているので地盤が弱く、不同沈下を招く恐れがあり特に注意が必要です。
2),建物の重量
建物の荷重は、構造・階数や建物の用途・屋根や外壁などの仕上げ材料・基礎の形状によって違ってきます。
一般的に木造の建物が軽く、鉄骨造は木造の約1.5倍・鉄筋コンクリート造は約5倍の重量となり、建物が重い程しっかりした地盤が要求されます。
3),軟弱地盤の対応
木造住宅を建てる場合に、地盤の強さ(地耐力)が30kN/u以下の場合には、地盤補強を行い地盤沈下を防ぐ必要があります。詳しくは、建物の性能/耐震性能を参照して下さい。
2,雨漏り
【症 状】 | サッシ・換気扇・トップライトなどの開口部からの雨漏り 下屋と外壁の取り合い部などからの雨漏り バルコニー廻りからの雨漏りなど |
| 耐久性の低下 ⇒ 耐震性の低下 |
【原 因】 | 施工不良 |
| 防水紙の立ち上がり・重ね不足、防水紙の施工手順不良、防水テープの未施工、壁取り合い部防水紙受けの下地材未施工、防水の立ち上がり不足、コーキングの未施工・コーキングの亀裂等施工不良など |
| 無理な設計 |
| 複雑な屋根形状、施工不可能な設計、木造物件の無理な屋上対応、壁際のトップライトの設置など |
【対 策】 | 現場確認と雨漏りが発生しそうな箇所の施工写真の提出義務付け。 |
| 開口部廻りの防水紙や防水テープの施工写真の提出義務付け。 |
1),注意点
プラン上で屋根形状を複雑にすると、施工不良を招き雨漏りの原因になります。出来るだけシンプルな形状が望ましく、また 棟違いや下屋との取り合いは職人さんが施工できるスペースを確保するように余裕を持たせた設計が必要です。デザインを優先して施工を無視するような設計は避けるべきです。
また、開口部廻りは、防水紙を捨て貼りし防水テープで雨水の浸入を防ぐ対策が必要です。現場に足を運んで確認するか、建築会社に開口部廻りや下屋と外壁の取り合いなどの雨漏りが発生しやすい箇所の施工写真を提出してもらう事も欠陥防止策となります。
3,建物の揺れ
【症 状】 | 歩行・風などによる建物のゆれ |
【原 因】 | 剛性不足 |
| 下階の耐力壁の不足、耐力壁の配置バランスが悪い(偏心率が大きすぎる)、床剛性が働いていない、金物の締め忘れ・未施工、小屋筋かいの未施工など |
【対 策】 | 剛性を考慮したプラン。 |
| 耐震性を上げる ⇒ 品確法の耐震等級2若しくは等級3にする。 |
| 金物・耐力壁・剛床などの水平力に抵抗する部材の正しい施工。 |
| 工事着工までに構造図の入手と内容確認。 |
| 金物の締め付け確認の表示(ペンキスプレー)、施工現場の確認チェック・施工写真の提出義務付け。 |
1),注意点
水平力を負担する耐力壁や剛床、及び 部材の継ぎ手や仕口に設ける接合金物は、建物の剛性を上げる重要な役目を果たしています。現場に足を運んで施工を確認する事や建築会社に重要な部位の施工写真の提出を義務付ける事をお勧めいたします。
耐震性を十分に確保していても、木造3階建や鉄骨造3階建ては、鉄筋コンクリート造に比べ建物重量が軽く、近隣に鉄道や大きな幹線道路がある場合には、地盤からの振動を拾う場合がありますので、建物の構造選定にも注意する必要があります。
また 建築基準法の壁量の安全率 を上げる事や、若しくは性能表示での等級を上げることで、建物の剛性が上がり、ゆれを低減することもできます。3階建を建てる場合等、耐震性能の安全率や耐震等級のランクアップをお勧め致します。
耐震性能の向上ポイントは建物性能の基礎知識/耐震性能をご覧下さい。
4,結露
【症 状】 | 北面の押入れなどに表面結露 壁体内結露 サッシ廻りなどの開口部廻りの表面結露 |
| 耐久性の低下 ⇒ 耐震性の低下 |
【原 因】 | 断熱不足、通気不足、換気不足、気密性不足、材料の選定不良、断熱材の施工ミス |
【対 策】 | 十分な厚さの断熱材を設ける。
床下・外壁・小屋裏の通気を確保する。
透湿抵抗の大きな断熱材を使用する。
透湿抵抗比を大きく取る。
気密性を上げる。
24時間換気を設ける。
複層ガラス(ペアガラス)や複層サッシを採用する。
断熱材の施工確認と施工写真の提出義務化など。 |
1),注意点
内部結露を防ぐには、断熱地域区分に応じた断熱性能以上を確保し、一般に多く採用されている充填断熱工法の場合は、壁体内の湿気が通気シートから放出されるように外壁側に空気層を設け、壁内部全てを断熱材覆う事は避け、室内側に断熱材の防湿シートがくるように施工する事が重要です。
また 室内からの湿気が壁内へ入らないように気密シートにて気密性を上げることをお勧めいたします。
断熱性能の対応は建物性能の基礎知識/断熱性能をご覧下さい。
【症 状】 | 化学物資による臭気、めまい・吐き気などの体調不良 |
【原 因】 | 化学物質を含んだ建材等の多用 |
【対 策】 | 下地材・仕上材等の規制対象建材の表示記号(F☆☆☆☆)を現場で確認するか、施工状況にて表示記号が確認できる施工写真 及び 現場で施工に使われる根太ボンドやクロス糊などの接着剤関係の安全データーシートの提出義務化。
その他、建物性能の基礎知識/空気環境性能(シックハウス対策)設計・施工の配慮を参照下さい。 |
6,床のたわみ
【症 状】 | 床の傾斜、床材フローリング等の目違い(段差)・亀裂 下階天井の垂れ及び暴れ |
【原 因】 | 梁・大引の寸法不足、梁大引の乾燥収縮等の暴れ |
【対 策】 | 構造計算による部材の選定。 |
| 集成材や乾燥材の使用。 |
| 工事着工までに、構造図(各階床伏図)の入手と部材寸法のチェック。 棟が上がった時点で、設計図(構造図)と現場の照合。 |
1),注意点
広い部屋を設ける場合は、部屋の短辺方向の寸法は最大2間(4P−4モジュール−関東間3640mm )までとし、それ以上になる間取りは出来るだけ避ける様にして下さい。尚 メーターモジュールを採用する場合は、梁や根太 及び剛床仕様の下地床板は、910mmモジュールよりサイズUPが必要です。
また 重量の重い書棚・ピアノなどを設置する場合は、梁・大引や根太・床合板の寸法をUPさせるなどの床の補強が必要です。忘れずに設計の段階から設置場所を設定する必要があります。
必要な梁サイズの目安はこちらを参照して下さい。
7,施工ミスや手抜き工事が起こりやすい項目
【状 況】 | 基礎関係 |
| - 基礎鉄筋のかぶり寸法不足。
- 基礎鉄筋の定着・重ね寸法不足。
- 基礎開口部の補強筋未施工。
- アンカーボルトの基礎芯ズレ。
- アンカーボルトの基礎埋め込み長さ不足。
- アンカーボルトのナット締め付け後のネジ山不足。
- 耐力壁部のアンカーボルト未施工。
- 15N/cu以上のホールダウンアンカーの基礎埋め込み未施工。
|
| 骨組み関係 |
| - 土台の基礎芯ずれ。
- 土台継ぎ手とアンカーボルトの位置関係の不良。
- 梁継ぎ手位置不良。(耐力壁部・階段部・吹抜け部・火打ち材部)
- 片筋違いの寄せ方向不良
- 設備配管・配線による柱・土台・梁等の構造材の欠損
- 面材耐力壁の設備開口による壁開口補強の未施工。
- 剛床の設備開口による床開口補強の未施工。
|
| 構造金物関係 |
| - 筋違い金物取付不良。(柱背割れ部に取付け)
- 筋違い金物ビス止め不足。
- ホールダウンアンカーと筋違いとの干渉。
- 必要耐力以下の接合金物を使用。
- 耐力壁を受ける柱頭・柱脚金物の同一金物(安全側)未対応。
- 面材耐力壁の受材寸法不足。(柱・梁廻り、合板継ぎ手部)
- 面材耐力壁受材とホールダウン金物との取り合い不良。
- 面材耐力壁止め付け不良。(釘の種別・釘の間隔)
- 剛床合板止め付け不良。(千鳥貼り・釘の種別・釘の間隔)
- 耐力壁を受けない柱の柱頭・柱脚金物の未施工。
|
| 雨仕舞い・防水関係 |
| - 下屋と外壁の取り合い部防水紙の下地合板未施工。
- 設備等による外壁貫通部の下地合板等の未対応。
- サッシ下端の防水紙先行増し貼り未施工。
- 軒天部の防水紙先行貼り未対応。
- 下屋と外壁取り合い部の防水紙の増し貼り未対応。
- サッシ・設備等によるの外壁防水シート開口部の防水テープの施工不良。
- バルコニー防水床とサッシ下端の寸法不足。
|
| 断熱材関係 |
| - 外壁断熱材の取り付け位置不良。(空気層の未確保)
- 下屋と上階の外壁部の取り合い部断熱材未施工。
- 浴室廻りの断熱材施工対応。
|
| その他 |
| - 壁ボード下地の未施工。(床部・継ぎ手部・天井部)
- プラスターボードのビス止め未対応。
- 壁出隅補強未対応。
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【原 因】 | |
| - 知識・技術力不足。
- 経験・対応不足。
- モラル不足。
- 監理者不在。
- 施工手間の簡素化。
- 行政・民間検査機関の安易な検査。
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【対 策】 | |
| - 実際の施工現場確認による建築会社の施工能力の事前把握。
- 施工体制の確認。
- 構造図・詳細図等の図面整備要請。
- 施工精度・納まり等の事前書類確認。
- 隠蔽部の施工写真の提出要請。
- 現場チェックと隠蔽部の写真撮影。
- 施工の問題点や疑問点を書面にて質疑し書面にて回答書をとる。
- 第三者の専門家による施工チェック。(第三者監理−ポイント監理)
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