建物の強さを表す指標として、品確法の住宅性能表示での耐震等級があります。
最低の基準として建築基準法の範囲内を等級1、建築基準法の1.25倍の強さを等級2、建築基準法の1.5倍の強さを等級3として、3段階の耐震等級が設けられています。
階数が2階以下の木造住宅で、住宅性能表示での耐震等級を判定するには、構造計算を行わない場合は、下記の@〜Eまでに掲げる基準に適合していることが要求されます。
但し 耐震等級1の場合は@のみ(建築基準法レベル)の適合でよく、A〜Eは対象外となります。
各等級共通で、建築基準法施行令46条による、地震力 若しくは風圧力の不利側の必要壁量以上の存在壁量を設けることが要求されます。
詳しくは、建築基準法の壁量計算を参照して下さい。
A,準耐力壁等を含めた耐力壁の存在壁量が各等級による必要壁量以上であること。
建築基準法では、耐力壁の存在壁量が建築基準法の必要壁量以上あれば良いのですが、住宅性能表示の耐震等級2 及び 等級3では、建築基準法の必要壁量(@)を確保し、更に耐力壁以外の準耐力壁や一定の条件を満たしている垂れ壁や腰壁を存在壁量に算入し、住宅性能表示による各等級別必要壁量以上(建築基準法より多めに設定)を確保することが要求されます。
存在壁量(耐力壁+準耐力壁等)≧必要壁量(住宅性能表示による各等級別)
※住宅性能表示での等級別必要壁量は、耐震等級2は表-2、耐震等級3は表-3を参照。
※準耐力壁等の壁倍率は表-1を参照。
<<準耐力壁とは?>>
耐力壁以外の開口部のない壁で、木ずり・構造用合板・石膏ボード等の材料で、柱・間柱・縦枠材に規定通りの釘留めが行われ、高さが横架材間内法寸法の80%以上の壁を言います。
<<一定条件を満たした垂れ壁・腰壁とは?>>
開口部のある壁で、高さ規定以外は準耐力壁に準じ、下記の内容を満たす壁を言います。
※上記、準耐力壁 及び 一定条件を満たす垂れ壁・腰壁を含めて「準耐力壁等」と言う。
<<準耐力壁等の壁倍率>>
準耐力壁等の仕様 | 材 料 | 釘打の方法 | 壁倍率 | ||
釘の種類 | 釘の間隔 | ||||
(1) | 構造用合板 | 合板のJASに適合するもので、種類は特類とし厚さ7.5mm以上の軸組み。 | N 50 | 15cm以下 | 2.5×0.6×h/H |
(2) | パーティクルボード | JIS A 5908に適合するもので、種類は曲げ強さの区分が8タイプ以上のものとし厚さ12mm以上の軸組み。 | |||
(3) | 構造用パネル | 構造用パネルのJASに適合する軸組み。 | |||
(4) | 石膏ボード | JAS A 6901に適合するもので、厚さ12mm以上の軸組み。 | GNF 40 又は GNC 40 | 15cm以下 | 1.0×0.6×h/H |
(5) | 木ずり | 断面寸法12mm×75mm以上とし、20mm程度の目透かし張りの上5枚以下毎に乱継ぎを設けた軸組み。 | GNF 40 N 50 2本打ち | 15cm以下 | 0.5×0.6×h/H |
(6) | (1)〜(5)の壁をそれぞれ両面に設けた軸組み。 | − | − | − | (1)〜(5)の数値の2倍 |
(7) | (1)〜(5)の壁を組み合わせた軸組み。 | − | − | − | (1)〜(5)の数値の和 |
<<耐震等級2の必要壁量>>
対象建築物 | 一般地域 | 多雪区域 | ||||
積雪1 m | 1m〜2m | 2m | ||||
(1) | 屋根を軽い材料で葺いたもの | 平屋 | 18 Z | 34 Z | 直線的に補間した数値 | 50 Z |
2階建ての1階 | 45 K1 Z | (45 K1+16) Z | 直線的に補間した数値 | (45 K1+32) Z | ||
2階建ての2階 | 18 K2 Z | 34 K2 Z | 直線的に補間した数値 | 50 K2 Z | ||
(2) | (1)以外の建物若しくは壁の重量が大きい建物 | 平屋 | 25 Z | 41 Z | 直線的に補間した数値 | 57 Z |
2階建ての1階 | 58 K1 Z | (58 K1+16) Z | 直線的に補間した数値 | (58 K1+32) Z | ||
2階建ての2階 | 25 K2 Z | 41 K2 Z | 直線的に補間した数値 | 57 K2 Z |
<<耐震等級3の必要壁量>>
対象建築物 | 一般地域 | 多雪区域 | ||||
積雪1 m | 1m〜2m | 2m | ||||
(1) | 屋根を軽い材料で葺いたもの | 平屋 | 22 Z | 41 Z | 直線的に補間した数値 | 60 Z |
2階建ての1階 | 54 K1 Z | (54 K1+16) Z | 直線的に補間した数値 | (54 K1+39) Z | ||
2階建ての2階 | 22 K2 Z | 41 K2 Z | 直線的に補間した数値 | 60 K2 Z | ||
(2) | (1)以外の建物若しくは壁の重量が大きい建物 | 平屋 | 30 Z | 50 Z | 直線的に補間した数値 | 69 Z |
2階建ての1階 | 69 K1 Z | (69 K1+20) Z | 直線的に補間した数値 | (69 K1+39) Z | ||
2階建ての2階 | 30 K2 Z | 50 K2 Z | 直線的に補間した数値 | 69 K2 Z |
各階の梁間方向及び桁行方向の耐力壁線の相互間の寸法が8m以下(各方向で筋違いを含まない壁、その他同等の靱性がある壁のみを用いる場合にあっては12m以下)であること。
この場合において、1m以内の耐力壁線のズレは同一線上にあると見なされます。
耐力壁線の間隔≦8m
<<耐力壁線とは?>>
地震または風により建物上部から伝わってくる水平力を建物下部に充分に伝達できるように、下記のa又はbに該当する存在壁量がある平面上の線を言います。
各階の梁間方向及び桁行方向にて、耐力壁線で挟まれるそれぞれの床組 又は屋根の小屋組及び屋根面は、計算によって算出した各等級(等級1は除く)ごとに必要な床倍率以上の存在床倍率を有する構造であること。
存在床倍率 ≧ 必要床倍率。
<<必要床倍率とは?>>
必要床倍率とは、耐力壁線で囲まれた「床組等」に各等級(等級1は除く)ごとに必要な床の倍率で、下記の計算式-1より算出します。
ΔQN=α ・CE ・L (式-1)
<<存在床倍率とは?>>
存在床倍率とは、床組の仕様や火打ち材の仕様により、品確法(下記 表-4〜表-7)にて定められた床組の強さを表しています。
又、当該耐力壁線の方向に異なる仕様の床組がある場合は、下記の計算式-2により算出した値を存在床倍率とします。
尚、当該耐力壁線に直行する方向に異なる床組がある場合は、最も数値の低い部分の存在床倍率とする。
ΔQE=煤iΔQE i ・L i)/Σ L i (式−2)
床面材の種類 | 根太 | 釘打ちの方法 | 存在床倍率 | |||
工法 | 間隔 | 釘の種類 | 釘の間隔 | |||
イ | 厚さ12mm以上の構造用合板 及び 厚さ12mm以上の構造用パネル | 転ばし | 340mm以下 | N 50 | 150mm | 1.00 |
500mm以下 | 0.70 | |||||
半欠き | 340mm以下 | N 50 | 150mm | 1.60 | ||
ロ | 500mm以下 | 1.12 | ||||
落し込み | 340mm以下 | N 50 | 150mm | 2.00 | ||
500mm以下 | 1.40 | |||||
ハ | 厚さ12mm以上、幅180mm以上の挽板 | 転ばし | 340mm以下 | N 50 | 150mm | 0.30 |
500mm以下 | 0.20 | |||||
半欠き | 340mm以下 | N 50 | 150mm | 0.36 | ||
500mm以下 | 0.24 | |||||
落し込み | 340mm以下 | N 50 | 150mm | 0.39 | ||
500mm以下 | 0.26 |
床面材の種類 | 釘打ちの方法 | 存在床倍率 | |||
釘の種類 | 釘の間隔 | 釘打ち箇所 | |||
ニ | 厚さ24mmの構造用合板 | N 75 | 150mm以下 | 川の字打ち | 1.20 |
4周打ち | 3.00 |
火打ちの種類 | 平均負担面積 | 主たる横架材の成 | 存在床倍率 | |
ホ | 木製90mm×90mm以上 及び 鋼製 | 2.5u以下 | 240mm以上 | 0.80 |
150mm以上 | 0.60 | |||
105mm以上 | 0.50 | |||
3.3u以下 | 240mm以上 | 0.48 | ||
150mm以上 | 0.36 | |||
105mm以上 | 0.30 | |||
5.0u以下 | 240mm以上 | 0.24 | ||
150mm以上 | 0.18 | |||
105mm以上 | 0.15 |
面材の種類 | 垂木 | 釘打ちの方法 | 屋根勾配 | 存在床倍率 | |||
工法 | 間隔 | 釘の種類 | 釘の間隔 | ||||
ヘ | 厚さ9mm以上の構造用合板及び厚さ9mm以上の構造用パネル | 転ばし | 500mm以下 | N 50 | 150mm | 45度以下(矩勾配以下) | 0.50 |
30度以下(5寸勾配以下) | 0.70 | ||||||
ト | 厚さ9mm以上、幅180mm以上の挽板 | 転ばし | 500mm以下 | N 50 | 150mm | 45度以下(矩勾配以下) | 0.10 |
30度以下(5寸勾配以下) | 0.20 |
1)胴差と通柱の仕口が品確法に定められた基準と同等以上の引張耐力があるか、又、2)建物外周部に接する部分の継手・仕口が「一定の条件の部位」では、計算式-3にて算出した必要接合部倍率以上の存在接合部倍率を、その他の建物外周部に接する継手・仕口は0.7以上の存在接合部倍率を有する構造とすることが求められています。
尚、筋違いの接合(告示1460号第1項) 及び 耐力壁に接する柱頭・柱脚の接合(告示1460号第2項)は、各等級共通にて確認する必要があります。
また、等級1では、1)、2)の構造耐力は要求されていません。
胴差と通柱の接合方法は、下記の区分に応じてそれぞれに記載する接合方法 又はこれと同等以上の引張耐力が必要です。
下記に記載する「一定条件の部位」の継手・仕口には、計算式-3にて算出した必要接合部倍率(0.7を下回る場合は0.7とする)以上の存在接合部倍率(表-8)を、その他の外周部に接する部分の継手・仕口については0.7以上の存在接合部倍率を確保する必要があります。
接合部の仕様 | 継手及び仕口の構造方法 | 存在接合部倍率 | |
@ | 長ほぞ差し込み栓打ち | 長ほぞ差し込み栓打ちとしたもの、若しくは かど金物(L字型)を用い、双方の部材にそれぞれ長さ6.5cmの太め鉄丸釘を5本平打ちしたもの 又は同等の接合方法としたもの。 | 0.70 |
L字型かど金物 | |||
A | T字型かど金物 | かど金物(T字型)を用い、双方の部材にそれぞれ長さ6.5mmの太め鉄丸釘を5本平打ちしたもの、若しくは、山形プレートを用い、双方の部材にそれぞれ長さ9.0cmの太め鉄丸釘を4本平打ちとしたもの 又は同等の接合方法としたもの。 | 1.00 |
山型プレート | |||
B | 羽子板ボルト | 羽子板ボルトを用い、一方の部材に対して径12mmのボルト締め、他方の部材に対して厚さ4.5mm、40mm角の角座金を介してナット締めをしたもの、若しくは 短ざく金物を用い、双方の部材に対してそれぞれ径12mmのボルト締めとしたもの 又は同等の接合方法としたもの。 | 1.40 |
短ざく金物 | |||
C | 羽子板ボルト+スクリュー釘 | 羽子板ボルトを用い、一方の部材に対して径12mmのボルト締め 及び長さ50mm、径4.5mmのスクリュー釘打ち、他方の部材に対して厚さ4.5mm、40mm角の角座金を介してナット締めをしたもの、若しくは 短ざく金物を用い、双方の部材に対してそれぞれ径12mmのボルト締め 及び長さ50mm、径4.5mmのスクリュー釘ちとしたもの 又はこれと同等の接合方法としたもの。 | 1.60 |
短ざく金物+スクリュー釘 | |||
D | 腰掛蟻 若しくは大入れ蟻掛け+羽子板ボルト 若しくは短ざく金物 | 双方の部材を腰掛蟻若しくは大入れ蟻掛けで接合し、羽子板ボルトを用い、一方の部材に対して径12mmのボルト締め、他方の部材に対して厚さ4.5mm、40mm角の角座金を介してナット締めしたもの、若しくは、双方の部材を腰掛蟻若しくは大入れ蟻掛けで接合し、短ざく金物を用い、双方の部材に対してそれぞれ径12mmのボルト締めとしたもの、又はこれと同等の接合方法としたもの。 | 1.90 |
E | 腰掛蟻 若しくは大入れ蟻掛け+羽子板ボルト×2 若しくは短ざく金物×2 | 双方の部材を腰掛蟻若しくは大入れ蟻掛けで接合し、羽子板ボルト2個を用い、一方の部材に対して径12mmのボルト締め、他方の部材に対して2個の金物それぞれについて、厚さ4.5mm、40mm角の角座金を介してナット締めしたもの、若しくは、双方の部材を腰掛蟻若しくは大入れ蟻掛けで接合し、短ざく金物2枚を用い、双方の部材に対してそれぞれ径12mmのボルト締めとしたものを2組用いたもの。 | 3.00 |
F | 10KN用ホールダウン金物 | ホールダウン金物を用い、一方の部材に対して径12mmのボルト2本、他方の部材に対して当該ホールダウン金物に止め付けた径16mmのボルトを介して緊結したもの 又はこれと同等の接合方法としたもの。 | 1.80 |
G | 15KN用ホールダウン金物 | ホールダウン金物を用い、一方の部材に対して径12mmのボルト3本、他方の部材に対して当該ホールダウン金物に止め付けた径16mmのボルトを介して緊結したもの 又はこれと同等の接合方法としたもの。 | 2.80 |
H | 20KN用ホールダウン金物 | ホールダウン金物を用い、一方の部材に対して径12mmのボルト4本、他方の部材に対して当該ホールダウン金物に止め付けた径16mmのボルトを介して緊結したもの 又はこれと同等の接合方法としたもの。 | 3.70 |
I | 25KN用ホールダウン金物 | ホールダウン金物を用い、一方の部材に対して径12mmのボルト5本、他方の部材に対して当該ホールダウン金物に止め付けた径16mmのボルトを介して緊結したもの 又はこれと同等の接合方法としたもの。 | 4.70 |
J | 15KN用ホールダウン金物×2組 | ホールダウン金物を用い、一方の部材に対して径12mmのボルト3本、他方の部材に対して当該ホールダウン金物に止め付けた径16mmのボルトを介して緊結したものを2組用いたもの。 | 5.60 |
T=0.185×ΔQE×L (式-3)
建物の荷重、横架材の間隔、長さ等の条件に対して、横架材の樹種及び断面寸法が適切に設定されているか確認する。
断面部材寸法は、(財)日本住宅・木材技術センター発行の「木造住宅のための構造の安定に関する基準に基づく横架材及び基礎のスパン表」が基本となります。
建物の強さを表す指標として、品確法の住宅性能表示での耐震等級以外に耐風等級があります。
最低の基準として建築基準法の範囲内を等級1、建築基準法の1.20倍の強さを等級2として、2ランクの耐風等級が設けられています。
階数が2階以下の木造住宅で、住宅性能表示での耐風等級を判定するには、構造計算を行わない場合は、下記の@、Aに掲げる基準に適合していることが要求されます。
但し 耐風等級1の場合は、耐震等級の@(建築基準法の遵守)のみ適合し、ここに記載された項目は対象外となります。
@,品確法にて設定されている、見付面積に乗じる数値に応じた壁量計算が適合していること。
準耐力壁等を含めた耐力壁の存在壁量が、品確法にて定められた見付面積に乗じる数値に応じて、算出された風圧力による必要壁量以上であることが要求されます。
存在壁量(耐力壁+準耐力壁等)≧風圧力による必要壁量(品確法による算定方法)
※品確法による、地域に応じた風速による見付面積に乗じる数値は、下記表-9に記載された数値とする。
地域に応じた風速(単位 m/s) | 30 | 32 | 34 | 36 | 38 | 40 | 42 | 44 | 46 |
見付面積に乗じる数値 | 53 | 60 | 67 | 76 | 84 | 93 | 103 | 113 | 123 |
地域に応じた風速は、国土交通省告示1454号にて各地域により定められています。
詳しくは地域別風速を参照して下さい。
A,耐震等級判定のB〜E 及び@の規定に適合していること。
耐震等級判定の、耐力壁線間隔(B)、存在床倍率が必要床倍率以上(C)、継手・仕口が基準に適合(D)、横架材の寸法(E)、建築基準法での必要壁量(@)の基準に適合していることが求められます。
この場合において、存在床倍率が必要床倍率以上(C)の式-1は下記の式-4とする。
ΔQN=α ・Cw ・l/L (式-1)
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