平成25年10月1日より建築物全体の省エネルギー性能をよりわかりやすく把握できる基準とするために、「一次エネルギー消費量」を指標とした建築全体の省エネルギー性能を評価する基準に改正されました。
住宅建物は、外皮の断熱性能の評価基準は、適切な温熱環境の確保などの観点から、一定水準(平成11年基準相当)が引き続きもとめられ、今回改正の「一次エネルギー消費量」の評価基準が追加されました。
尚、住宅においては従前の基準が平成27年3月31日まで経過措置として対応が可能となっています。
平成25年10月1日より建築物全体の省エネルギー性能をよりわかりやすく把握できる基準とするために、「一次エネルギー消費量」を指標とした建築全体の省エネルギー性能を評価する基準に改正されました。
住宅建物は、外皮の断熱性能の評価基準は、適切な温熱環境の確保などの観点から、一定水準(平成11年基準相当)が引き続きもとめられ、今回改正の「一次エネルギー消費量」の評価基準が追加されました。
尚、住宅においては従前の基準が平成27年3月31日まで経過措置として対応が可能となっています。
また、平成12年から施行された、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)の住宅性能表示基準でいうと、旧省エネ基準は等級2、新省エネ基準は等級3、次世代省エネ基準は等級4に概ね該当し、今回改正された平成25年基準は断熱性能等級4と改正に伴い、一次エネルギー等級が新たに設けられ一次エネルギー消費量等級4に該当します。
また、平成24年に施行された低炭素基準については、一次エネルギー消費量等級5に該当します。
あなたの計画中の建物の断熱性能は、どのランクの性能がありますか?
また、省エネの評価はどの評価方法で評価されていますか?
各断熱基準の性能は、旧省エネ基準(等級2)<新省エネ基準(等級3)<次世代省エネ基準(等級4)=平成25年基準<低炭素基準の順に優れています。
平成25年省エネ基準における改正点は下記となります。
1.一次エネルギー消費量の導入。
外皮の断熱性能だけでなく、暖冷房や換気・照明・給湯などの設備機器も含めた、建物全体の省エネルギー性能を評価する基準が導入されました。
一次エネルギー消費量とは、化石燃料、原子力燃料、水力・太陽光などの自然から得られるエネルギーを「一次エネルギー」、これらを変換・加工して得られるエネルギー(電気、灯油、都市ガス等)を「二次エネルギー」といいます。
建築物では、二次エネルギーが多く使用されており、それぞれ異なる計量単位(kWh、ℓ、MJ等)で使用されています。
それを一次エネルギー消費量へ換算することにより、建築物の総エネルギー消費量を同じ単位(MJ、GJ)で求めることができるようになります。
建築物に導入される設備機器の仕様から、年間の設計一次エネルギー消費量を算出し、これを基準一次エネルギー消費量と比較することにより評価します。
設計一次エネルギー消費量 ≦ 基準一次エネルギー消費量
評価対象となる建築物において、地域区分や床面積等の共通条件のもと、実際の建物の設計仕様で算定した設計一次エネルギー消費量が、基準仕様(平成11年基準相当の外皮と標準的な設備)で算定した基準一次エネルギー以下となることを基本とします。
尚、住宅においての省エネ手法を加味する場合には、
@設備の効率化については、高効率機器の採用。
A負担の削減については、外皮の断熱化・日射の遮蔽と取得・通風利用・躯体蓄熱・熱交換換気の採用・調光・照明制御・節湯型器具の採用・太陽熱温水器の設置・高断熱浴槽の採用。
Bエネルギーの創出については、太陽光発電設備の設置・コージェネレーション設備の設置。
などの対応となります。
2.外皮の省エネ性能の見直し。
外皮の断熱性能について、年間暖冷房負荷/熱損失係数(Q値)・夏期日射取得係数(μ値)から、外皮平均熱貫流率(UA値)・冷房期の平均日射熱取得率(ηA値)の基準へ変更されました。
外皮平均熱貫流率(UA値)[W/uK]とは
建物内外の温度差が1℃の場合の部位(屋根や天井・外壁・床・開口部・基礎立上がり)ごとの熱損失量の合計を外皮等の面積で除した値を外皮平均熱貫流率(UA)といい、UA値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能が高くなります。
地域区分にて定められた基準値(地域区分に応じた外皮平均熱貫流率の基準)以下に、建物の外皮平均熱貫流率(UA値)を抑えることが望ましいとされています。
建物の外皮平均熱貫流率 ≦ 地域区分に応じた外皮平均熱貫流率の基準
◎総熱損失量 [W/K]=A+B+C+D+E ※換気及び漏気によって失われる熱量は含まない。
◎外皮表面積 [u]=屋根(天井)面積+外壁面積+床面積+開口面積+土間面積
外皮表面積は、熱的境界となる屋根又は天井・外壁・床・開口などの外皮、及び土に接する土間床の水平部を対象としています。
◎熱貫流率(U値) [W/u K]
建物内外の温度差1℃の場合において1u当り貫流する熱量をワット(W)で示した数値で、数値が小さいほど熱を伝えにくいことになり、断熱性能が高い部材です。尚、平成21年4月に施行された改正省エネ法において、熱貫流率を表す記号が国際的に統一され、「K値」から「U値」に変更されいます。
→ U値の算出方法
◎温度差係数 [W/u K]
各部位で生じる温度差を考慮し、熱貫流率を補正する際に用いる補正係数値で各部位に定められています。
たとえば、床裏空間は外気温よりも高くなり、そのため床から逃げる熱損失は、外気に直接触れている張り出し床よりも少なくなります。このような場合を加味するために温度差係数を使用します。
外気又は外気に通じる空間(小屋裏・天井裏など)は1.0、外気に通じていない空間又は外気に通じる床裏は0.7です。
冷房期の平均日射熱取得率(ηA値)とは
冷房期に、部位ごとの日射熱取得率に面積、方位係数を乗じた値を住宅全体で合計し、外皮等面積の合計で除した値をいい、ηA値が小さいほど日射が入りづらく、冷房効率が高くなります。
地域区分にて定められた基準値(地域区分に応じた冷房期の平均日射熱取得率の基準)以下に、建物の冷房期の平均日射熱取得率(ηA値)を抑えることが望ましいとされています。
建物の冷房期の平均日射熱取得率 ≦ 地域区分に応じた冷房期の平均日射熱取得率の基準
◎総日射熱取得量 [W/(W/u)]=A+B+C
◆ 屋根(天井)、外壁のη値
η値=U値×0.034
◆ 開口部のη値
η値=ηd×fC ηd:ガラスの日射熱取得率 fC:冷房期の取得日射量補正係数
取得日射量補正係数とは、窓の日射熱取得率を計算するときに用いる係数で、庇などの日除け効果・ガラスの反射・地面からの反射などを考慮するために使用します。
地域、方位、ガラス種類、庇の有無、庇の大きさなどによって変わります。
◆方位係数
方位係数とは、地域区分及び方位毎に日射熱を補正する係数です。
冷房期の補正係数をνc(ニュー・シー)、暖房期の補正係数をνH(ニュー・エイチ)といいます。
3.地域区分の細分化。
住宅と非住宅建築物の地域区分が統一され、従前の6区分から8区分に細分化されました。
この地域区分は山間部や沿岸部といった特徴的な地形のために一つの県の中でも気候が大きく異なる地域が存在することも考慮し、市町村単位で指定されています。また、市町村合併した地域では同じ市や町であっても旧自治体がどこだったかによって地域区分が異なってしまうこともありますので注意が必要です。 → 地域区分(平成25年版)
4.その他変更点等。
(1) 省エネルギー性能の評価単位
省エネルギー性能の評価単位は、建物の用途により異なります。
住宅の場合は、
一次エネルギー消費量≦基準値・外皮平均熱貫流率UA≦基準値・平均日射熱取得率ηA≦基準値。
住戸を含む建築物の場合は、
各住戸の一次エネルギー消費量≦基準値・外皮平均熱貫流率UA≦基準値・平均日射熱取得率ηA≦基準値に、建物全体の一次エネルギー消費量≦建物全体の基準値(各住戸の合計+共用部+非住宅部分)及び、非住宅部分のPAL値≦基準値。
非住宅建築物の場合
建物全体の一次エネルギー消費量≦建物全体の基準値とPAL値≦基準値。
(2) 建物用途区分から室用途区分への変更
非住宅建築物の基準一次エネルギー消費量の設定に際して、室用途の構成によるエネルギー消費量の違いが考慮できるよう、下図に示す様に例えば201室の室用途毎に一次エネルギー消費量の基準を設定しています。
基準値の設定について、改正前の基準では全ての地域で、断熱性能、日射遮蔽性能の基準が設けられていましたが、改正後の基準では、寒冷地において日射遮蔽性能の基準が、蒸暑地においては断熱性能の基準が設けられていません。
「建築物エネルギー消費性能等を定める省令」の第1章第1条2項イの(1)の(@)において、地域区分の8の冷房期の平均日射熱取得率が、3.2から6.7に変更されています。(令和2年4月より)
平成25年省エネルギー基準の評価フローは大きく分けて3種類、性能基準(計算ルート)で2種類と仕様基準の1種です。
性能基準(計算ルート)には、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」による、「エネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物の所有者の判断基準」(以下「建築主の判断基準」という。)の1-3、「外皮平均熱貫流率等の基準」の評価方法と、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」による、「住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する設計、施工及び維持保全の指針」(以下「設計施工指針」という。)の2,の「外壁、窓等を通しての熱の損失の防止に関する基準」(本則)の2種類があります。
また、有る程度簡易な評価方法として、「設計施工指針」の附則の5,の仕様基準(従前の対応評価方法)があり、当分の間使用可能となっています。
(1) 仕様基準の評価フロー
仕様基準の評価対応は、まず、外皮等面積の合計に占める開口部面積の合計の割合(以下「開口部比率」という。)が、住宅の種類及び地域区分に応じ、基準値以下の場合は適否判定としてNGとなり、設計変更をおこなうか性能基準(計算ルート)の評価対応で確認する必要がでてきます。
開口部比率がOKならば、平成11年基準と同様に、躯体の熱貫流率の基準・断熱材の熱抵抗の基準・構造熱橋部の基準・開口部の断熱性能に関する基準をクリアーすれば外皮性能基準に適合していると評価できます。
また、一次エネルギー消費量については、外皮等面積の合計を床面積で除した数値(以下「外皮面積比率」という)が、住宅の種類及び地域区分に応じ、基準値以下となることが条件となり、平成25年版の「設計施工指針」の6、一次エネルギー消費量に関する基準に記載の対応をクリアーすれば、一次エネルギー消費量基準適合となります。
尚、「建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令」により、平成28年4月1日以降については開口部比率の基準と外皮面積比率の基準の対応が削除されました。
※ 外皮平均熱貫流率や冷房期の平均日射取得率、及び一次エネルギー消費量の計算は、各団体から計算ソフトがWebで公開されています。
非住宅建築物及び複合建築物の非住宅部分に係る基準は、平成25年4月1から施行されます。ただし、平成26年3月31日までは経過措置期間として、改正前の基準を用いることができます。
住宅及び複合建築物の住宅部分に係る基準は、平成25年10月1日から施行されますが、平成27年3月31日までは経過措置期間として、改正前の基準を用いることができます。
建築物に係るエネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基準(平成11年/通商産業省/建設省/告示第1号)は、平成25年4月1日から廃止。
住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基準(平成18年/経済産業省/国土交通省/告示第3号)「建築主の判断基準」は、平成25年10月1日から廃止する。
平成25年(「エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号)」)の改正後、@平成28年1月29日の一部改正(「エネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物の所有者の判断基準(以下建築主の判断基準)」(平成25年経産省・国交省告示1号の一部改正))、A平成27年7月8日に「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(法律第53号)」及び「建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令」と告示「建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令における算出方法等に係る事項」と「住宅部分の外壁、窓等を通しての熱の損失の防止に関する基準及び一次エネルギー消費量に関する基準」の公布、B令和元年5月17日公布「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律施行令」の改正等により改訂されています。
※尚、地球温暖化等の問題により、この時期に旧省エネ法から建築物省エネ法に引き継がれました。
@の改正について
外皮平均熱貫流率UAを算定する式の改正。
冷房期の平均日射熱取得率ηACを算定する式の改正。
基準一次エネルギー消費量を算定する式において、ESH、ESC等の算定する式が改正。
Aの改正について
「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(法律第53号)」が平成28年4月1日より部分的に表示制度、容積率特例等の誘導基準が施行され、また、平成29年4月1日から適合義務、届出等の規制措置が施行されました。
この施行により、「エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号)」(以下省エネ法)において定められていた建築物の省エネルギーにかかる措置について「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(法律第53号)」(以下建築物省エネ法)が引継ぐ形となりました。
Bの改正について
「建築物省エネ法」新設において、2000u以上の大規模建築物の適合義務が300u以上となり中規模以上の非住宅建築物が適合義務となります。
また、説明義務制度が新たに導入され、300u未満の小規模建築物(住宅・非住宅・複合建築物)において、建築士から建築主へ計画建物の省エネ性能(努力義務)についての内容を説明する事が義務付けされました。
※ Bの改正内容については令和3年4月1日より施行となります。
省エネの評価については、建築物省エネ法の戸建住宅の評価方法を参照。
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