●気密住宅の仕様 (高気密住宅)

次世代省エネルギー基準では、外部に面する外壁・天井又は屋根・床の断熱材を行う箇所の室内面側に気密シートにて気密工事を行い、気密住宅仕様とすることが求められます。

気密住宅

気密シートの仕様は、断熱地域区分T及びU地域では厚さ0.2mm以上V〜X地域では0.1mm以上とし、気密テープ・気密パッキン材・現場発泡断熱材・シーリング材などの気密補助材にて、気密層の連続性を保ち、隙間相当面積2cu以下(T・U地域)若しくは5cu以下(V地域以降)の気密性能が要求されます。
気密シートの施工範囲は図−1を参照して下さい。

※1 新省エネ基準では、T地域のみ気密住宅(隙間相当面積5cu以下・気密シート0.1mm以上)が必須となり、その他の地域は気密住宅まで要求されません。しかし、U地域においても気密住宅とするか、1ランク上の次世代省エネ仕様とする事をお勧めいたします。

※2 床下地に構造用合板・構造用パネル・パーティクルボード等の通気性の低い乾燥した面材を使用し、継ぎ目を気密補助材で処理した場合には、床面の気密シートを省く事ができます。

※3 気密住宅とする場合の玄関土間や浴室の土間など外気に接する土間床等には、基礎断熱を行うと共に土台と基礎の間に気密材又は気密補助材にて当該部分に隙間が生じないようにします。尚 基礎断熱とした場合は、最下階の床には気密層は不要です。


尚、平成21年4月1日より、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」の一部改正があり、相当隙間面積の規定や気密層の施工に関する基準が除外され、それに伴い、住宅金融支援機構のフラット35Sの省エネルギー性に関する基準(省エネルギー対策等級4)に係る仕様についても、従前は赤色のアンダーライン(必ず遵守すべき項目)が引かれていましたが、改正後はアンダーラインが削除(気密工事の規定については、従前通り(一部改訂)記載されています。)されています。

しかし、断熱材の施工の難しさや壁体内結露のことを考えると、気密住宅仕様に対する強制力は無くなりましたが、改正前の考え方で気密住宅仕様は行いたいものです。


※ 下記に、フラット35Sにおいて気密工事を行う場合の規定を掲載しておりますが、改訂になった内容については、赤色にて改訂対応済みの内容を掲載してます。


気密工事(防湿フイルム)の施工 (充填断熱工法)

1) 一般事項

1、気密工事に使用する気密材の種類及び品質は、次の通りとする。但し、T又はU地域においは、イ)、ハ)、ホ)、ト)材、又はこれと同等以上の気密性、強度、耐久性を有する材料とする。
イ)住宅用プラスチック系防湿フイルム、又はこれと同等以上の気密性を有するもの。
ロ)透湿防水シート、又はこれと同等以上の気密性を有するもの。
ハ)合板、石膏ボード、構造用パネル、又はこれと同等以上の気密性を有するもの。
ニ)プラスチック系断熱材、吹付け硬質ウレタンフォーム、又はこれと同等以上の気密性を有するもの。
ホ)乾燥木材等。
ヘ)金属部材。
ト)コンクリート部材。
2、気密工事に使用する防湿フイルムはJIS A 6930(住宅用プラスチック系防湿フイルム)に適合するもの、又はこれと同等以上の防湿性、強度、耐久性を有するものとする。また、寸法は所定の重ね寸法が確保できるものとし、出来るだけ幅広の長尺フイルムを用いる。
3、防湿フイルムは連続させ、隙間の出来ないように施工する。又、継ぎ目は下地材のある部分で30o以上重ね合わせ、その部分を合板、石膏ボード、乾燥した木材等で挟みつける。
4、気密層の連続性を確保するため、気密材の継目の生じる部分に使用する気密補助材には以下の材料その他これに類する材料を用いる。
イ)気密テープ(プチル系テープ、アスファルト系テープ等気密性、又は水密性のあるものとし、経年によって粘着性を失わないもの。)。
ロ)気密パッキン材(気密性のあるものとし、経年によって弾力性を失わないもの。)。
ハ)現場発泡断熱材(高い気密性を有するもの。)
ニ)シーリング材(経年によって弾性と付着力を失わないもの。)。

2) 壁・床・天井の防湿フイルムの対応

防湿フイルムは、継ぎ目を縦・横とも下地材のある所で30mm以上重ね合わせ、端部は下地材のある部分で気密テープを用いて留め付けるか、木材等で挟み付け釘留めとする。
尚 継ぎ目は、ステープルにて200〜300mm程度の間隔に、その他の箇所は要所に行い、たるみ・しわのないように張る。

※ 真壁の柱部分、及び中間階床の横架材(胴差)に乾燥材(含水率20%以下)を使用する場合には、その部分に防湿フイルムを張らなくてもよい。

また、床に防湿フイルムを張らない場合は下記とする。

イ)床下地板に構造用合板、構造パネル、パーティクルボード等を用いる。
ロ)床合板等の継ぎ目は気密補助材で処理するか、実加工品を使用、または床合板等を下地材がある部分で突き合わせて、その部分を釘で留めつける。

3) 壁・床・天井の取合い部の気密シートの対応

防湿フイルムは、屋根又は天井と壁、壁と床の取合い部、及び壁の隅角部で、これを構成する各部位が外気等に接する部分において、下地材のある部分で30mm以上重ね合わせ、ステープルにて200〜300mm程度の間隔で、たるみ・しわがないように張る。

イ) 最下階の床と外壁の取合いは次のいずれかとする。

  1. 最下階の床と取合う外壁部に、先張りの防湿フイルムを土台まで連続させ、気密テープによるか木材等で挟み付け釘留めとする。
    床の防湿フイルムは外壁部に廻りこませ、外壁部の防湿フイルム及び先張り防湿フイルムと下地のある部分で30mm以上重ね合わせる。
  2. 床合板を土台に直接釘留めし、床及び外壁の防湿フイルムは下地材のある部分で30mm以上重ね合わせるか、床合板に気密補助材を用いて留め付ける。
  3. 取合い部の外壁内に木材の気流止めを設け、床及び外壁の防湿フイルムは、下地材のある部分で30mm以上重ね合わせる。
  4. 床下地材に通気性の低い乾燥した面材合板を使用し、床の防湿フイルムを設けない場合には、上記a、b又はcに準じて施工を行い、床合板と外壁の防湿フイルムとを気密補助材を用いて連続させる。
気密シート/外壁と最下階床の取合い

ロ) その他の階の床と外壁の取合い部は次のいずれかとする。

  1. その他の階の床と取合う外壁部に先張りの防湿フイルムを張る。先張り防湿フイルムと梁等の横架材との取合いは、先張りの防湿シートを切り開き、シートの切り開き部分を留めしろとし、梁又は胴差し等の横架材に気密テープを併用して留め付ける。外壁断熱材施工後に、外壁の防湿フイルムは先張りの防湿フイルムと下地材のある部分で30mm以上重ね合わせる。
  2. 下階の外壁の防湿フイルムを胴差(乾燥材に限る)に留め付け、上階の外壁の防湿フイルムは、胴差に直接釘留めされた床合板等に気密補助材を用いて留め付ける。
気密シート/その他の階の床と外壁の取合い

ハ) 屋根の直下の天井(又は屋根)と外壁の取合い部は次のいずれかとする。

  1. 壁の防湿フイルムを桁まで連続させ、気密テープ若しくは木材で挟み釘留めとする。また 天井の防湿フイルムは下地材のある部分で30mm以上重ね合わせる。
  2. 屋根の直下の天井(又は屋根)と取合う外壁部に先張りの防湿フイルムを桁まで連続させ留め付ける。天井(又は屋根)の防湿フイルムは外壁部に廻り込ませ、外壁部の防湿フイルム及び先張り防湿フイルムと下地材のある部分で30mm以上重ね合わせる。
  3. 取合い部の外壁内に木材の気流止めを設け、屋根の直下の天井(又は屋根)及び外壁の防湿フイルムは、下地材のある部分で30mm以上重ね合わせる。
気密シート/屋根の直下の天井と外壁の取合い

ニ) 外壁と間仕切り壁の取合い部は次のいずれかとする。

  1. 外壁の防湿フイルムを留め付けてから間仕切り壁を設ける。(外壁防湿フイルム先行仕様)
  2. 間仕切り壁が取り付く外壁部分に、先張り防湿フイルムを設ける。この場合、外壁の防湿フイルムは先張りの防湿フイルムに下地材のある部分で30mm以上重ね合わせる。(外壁部先張り仕様)
  3. 外壁の防湿フイルム端部を間仕切り壁が外壁に取り付く部分にある間柱(乾燥材に限る)に、気密テープ若しくは木材で挟み付け釘留めとする。
気密シート/外壁と間仕切り壁の取合い

ホ) 最下階の床と間仕切り壁の取合い部は次のいずれかとする。

  1. 最下階の床の防湿フイルムを留め付けてから間仕切り壁を設ける。(床防湿フイルム先行仕様)
  2. 床下地材に通気性の低い乾燥した面材合板を施工する場合は、床合板施工後間仕切り壁を設ける。
    尚 床合板の継ぎ目は気密補助材にて隙間処理を行う。
  3. 最下階の床の間仕切り壁が取り付く部分に、先張り防湿フイルムを設ける。この場合、最下階の床の防湿フイルムは先張りの防湿フイルムに下地材のある部分で30mm以上重ね合わせる。(床部先張り仕様)
  4. 床の防湿フイルム端部を、床に取り付く部分の間仕切り壁下地材に、気密テープ若しくは木材で挟み付け釘留めとする場合は、間仕切り壁下地材は乾燥材とする。
気密シート/最下階の床と間仕切り壁の取合い

ヘ) 屋根の直下の天井(又は屋根)と間仕切り壁の取合い部は次のいずれかとする。

気密シート/屋根直下の天井と間仕切り壁の取合い
  1. 屋根の直下の天井(又は屋根)の防湿フイルムを留め付けてから間仕切り壁を設ける。(天井防湿フイルム先行仕様)
  2. 屋根の直下の天井(又は屋根)の間仕切り壁が取り付く部分に、先張り防湿フイルムを設ける。この場合、屋根の直下の天井(又は屋根)の防湿フイルムは先張りの防湿フイルムに下地材のある部分で30mm以上重ね合わせる。(天井部先張り仕様)
  3. 天井の防湿フイルム端部を天井に取り付く部分の間仕切り壁下地材に、気密テープ若しくは木材で挟み付け釘留めとする場合は、間仕切り壁の下地材は乾燥材とする。

ト) 下屋部分の床・天井・外壁の取合い部は次とする。

  1. その他の階の床と外壁の取合い部は ロ)による。
  2. 下屋部分の天井の防湿フイルムは、先張り防湿フイルム(@)若しくは胴差に留め付けた下屋立ち上がり防湿フイルム(A)と連続させ、下地材のある部分で30mm以上重ね合わせる。
気密シート/下屋の納まり

4) 細部の防湿フイルムの対応(地域T及びUの場合)

イ)構造材が防湿フイルムを貫通する部分は、フイルムと構造材を気密テープ等で留め付ける。

ロ) 開口部廻りの施工は次による。

  1. 開口部廻りは、サッシ取り付け部で結露が生じないよう、構造材や防湿フイルムとサッシ枠の隙間を気密補助材で処理する。
  2. 床下及び小屋裏等の点検口廻りは、防湿フイルムを点検口の枠材に、気密テープなどによって留め付ける。
  3. 断熱構造とする部分に用いる床下及び小屋裏点検口は気密性の高い構造とする。

ハ) 設備配管廻りの施工は次による。

  1. 設備配管又は配線により外壁、天井、床の防湿フイルムが切れる部分は、貫通する外壁、天井、床のそれぞれの防湿フイルムを切り開き、切り開いた部分を留めしろとし設備配管又は配線に気密テープで留め付けるなど、気密層が連続するように処理する。
  2. 電気配線のコンセント、スイッチボックスの廻りの施工は次のいずれかとし、外壁、天井、床のそれぞれの防湿フイルムと気密テープで留め付ける。
  1. 防湿措置が講じられた専用のボックスを使用。(気密コンセント・スイッチボックス)
  2. コンセント・スイッチボックスの廻りを防湿フイルムでくるむ。

※ 上記4)細部の防湿フイルムの対応は、断熱地域区分のT及びU地域に建てる場合に限定されますが、その他V〜X地域にて建てる場合においても、気密性を確保するために適用することをお勧めいたします。



主な改訂点は、防湿気密フイルムを防湿フイルム、通気止めを気流止めに名称が変わり、留付けがタッカー釘からステープルに、重ね長さが100oでしたが30oに変更になっています。また、防湿フイルムの厚さの寸法規定が削除され、新たに、気密工事に使用する気密材の規定が設けられ、T又はU地域とそれ以外の地域によって運用内容に違いが出ています。
しかし、気密工事を行う上では、内容については従前と変わりありません。

尚、ここに掲載している納まり図等に於いて、気密シートを防湿フイルム、通気止めを気流止め、重ね寸法100oを30oと読み替えてください。


尚、このページに記載する気密住宅の仕様については、フラット35技術基準(旧住宅金融公庫基準)の内容を記載していますが、基本となっている「エネルギーの使用の合理化に関する法律」の「設計・施工指針」はこちらを参照して下さい。


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