日本の建て替え時における平均築年数は30年、アメリカは55年、イギリスは77年と、日本の住宅は欧米諸国と比べると非常に短いことで知られています。
これは、高度経済成長のなか、日本では深刻な住宅不足に直面したために、次々と新たな「マイホーム」が建設されていき、こうした過程のなかで、おおよそ30年サイクルで建て替えられるのが一般的になっていったと言われています。
そこで、住宅の構造や設備が長く使用できる住宅が求められるようになり、平成21年6月、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」という法律が施行されました。
この法律では、長期優良住宅の普及の促進のため、構造躯体の劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、可変性、バリアフリー性、省エネルギー性の性能を有し、かつ、良好な景観の形成に配慮した居住環境や一定の住戸面積を有する住宅の建築計画、及び一定の維持保全計画を策定して、所管行政庁に申請し、認定を受けた住宅については、認定長期優良住宅建築等計画に基づき、建築及び維持保全を行うこととなります。
尚、一定の基準を満たした認定長期優良住宅は、税制面での優遇などを受ける事ができます。
長期優良住宅の認定基準には、「劣化対策」、「耐震性」、「維持管理・更新の容易性」、「可変性」、「バリアフリー性」、「省エネルギー性」、「居住環境」、「住戸面積」、「維持保全計画」の9つの性能項目があり、それぞれの性能項目の基準を満たすように住宅の建築計画 及び 一定の維持保全計画を策定して、所管行政庁の認定を受ける必要があります。
その上で、認定を受けた計画に従って建築をし、維持保全を行なっていきます。
長期優良住宅の認定基準の概要
性能項目等 | 概要 | 住宅性能表示等級 |
劣化対策 |
数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できること。
- 通常想定される維持管理条件下で、構造躯体の使用継続期間が少なくとも100年程度となる措置。
[木造]
- 床下及び小屋裏の点検口を設置すること。
- 点検のため、床下空間の有効高さを330o以上確保すること。
[鉄筋コンクリート]
- セメントに対する水の比率を低減するか、鉄筋に対するコンクリートのかぶりを厚くすること。
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劣化対策等級(構造躯体等)3に相当 |
耐震性 |
極めて稀に発生する地震に対し、継続利用のための改修の容易化を図るため、損傷のレベルの低減を図ること。
- 大規模地震力に対する変形を一定以下に抑制する措置を講じる。
[層間変形角による場合]
- 大規模地震時の地上部分の各階の安全限界変形の当該階の高さに対する割合をそれぞれ1/100以下(建築基準法レベルの場合は1/75以下)とすること。
[地震に対する耐力による場合]
- 建築基準法レベルの1.25倍の地震力に対して倒壊しないこと。
[免震建築物による場合]
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耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上に相当 |
維持管理・更新の容易性 |
構造躯体に比べて耐用年数が短い内装・設備について、維持管理(清掃・点検・補修・更新)を容易に行うために必要な措置が講じられていること。
- 構造躯体等に影響を与えることなく、配管の維持管理を行うことができること。
- 更新時の工事が軽減される措置が講じられていること。 等
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維持管理対策等級(専用配管)3に相当 |
可変性 ※1 |
居住者のライフスタイルの変化等に応じて間取りの変更が可能な措置が講じられていること。
[共同住宅]
- 将来の間取り変更に応じて、配管、配線のために必要な躯体天井高を確保すること。
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− |
バリアフリー性 ※1 |
将来のバリアフリー改修に対応できるよう共用廊下等に必要なスペースが確保されていること。
- 共用廊下の幅員、共用階段の幅員・勾配等、エレベーターの開口幅等について必要なスペースを確保すること。
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※2 |
省エネルギー性 |
必要な断熱性能等の省エネルギー性能が確保されていること。
- 省エネ法に規定する平成11年省エネルギー基準(次世代省エネ基準)に適合すること。
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省エネルギー対策等級4に相当 |
居住環境 |
良好な景観の形成その他の地域における居住環境の維持及び向上に配慮されたものであること。※3
- 地区計画、景観計画、条例によるまちなみ等の計画、建築協定、景観協定等の区域内にある場合には、これらの内容と調和が図られること。
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− |
住戸面積 |
良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること。※4
[一戸建ての住宅]
- 75u以上(2人世帯の一般型誘導居住面積水準)。※5
[共同住宅等]
- 55u以上(2人世帯の都市居住型誘導居住面積水準)。※5
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− |
維持保全計画 |
建築時から将来を見据えて、定期的な点検・補修等に関する計画が策定されていること。
- 維持保全計画に記載すべき項目については、@構造耐力上主要な部分、A雨水の浸入を防止する部分及びB給水・排水の設備について、点検の時期・内容を定めること。
- 少なくとも10年ごとに点検を実施すること。
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− |
長期優良住宅は、劣化対策、耐震性、省エネルギー性などの住宅性能が高く、良質な住宅ですが、当然その分の建築コストは一般住宅より高くなる傾向があります。しかし、良質な住宅ストックを普及させ将来世代に継承するために、様々な優遇措置がはかられています。
平成21年度税制改正においては、過去最大規模の住宅ローン減税が実現され、そのうち長期優良住宅については、最大控除額は600万円に達します。
また、ローンを利用しないで長期優良住宅を取得する人にも適用されるのが、投資型減税です。長期優良住宅にするための性能強化費用相当分の10%相当額がその年の所得税から控除されます。ただし性能強化費用が1000万円を越える場合には、1000万円が限度額でその10%が控除額となります。
その他ローン減税以外に、長期優良住宅の認定を取得すると「登録免許税」「不動産取得税」「固定資産税」の税の負担も軽減されます。
長期優良住宅に対して、住宅ローンの供給支援や優良住宅取得(フラット35S)の拡充などの措置がうけられます。
【長期優良住宅に対して、住宅ローンの供給支援】
民間金融機関が、長期優良住宅について最長50年の住宅ローンを供給できるよう、住宅金融支援機構が支援(フラット50)。
【優良住宅取得(フラット35S)の拡充】
住宅金融支援機構の優良住宅取得支援制度(フラット35S)において、長期優良住宅に係る金利優遇の期間を20年間に延長(20年金利引下げタイプの適用)。
長期優良住宅の認定を受けるには、住宅建築の着工前にB認定申請をして、C認定を受けた後に着工することになります。
認定申請は、所管行政庁で受け付けており、所管行政庁とは、建築基準法に基づく建築確認申請をする建築主事がおかれている地方公共団体のことを言います。
また、住宅品確法に基づく登録住宅性能評価機関であらかじめ@技術的審査を依頼することで、より効率的に手続きを進めることが可能な場合があります。登録住宅性能評価機関では、申請を受けると認定基準に適合しているかどうかを事前に審査しA適合証が発行されます。その適合証を所管行政庁に提出することで審査が効率的に進められます。